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写真は上顎の奥歯を含む一連の歯列を、口腔内から撮影したものです。

上顎右側の奥歯が広範囲に欠損しており、噛む機能が低下した状態です。

インプラントを支えとしたブリッジにより、奥歯までしっかり連続した歯列が回復しています。


他院で「上顎の骨が足りないため、インプラントを入れるには大掛かりな骨造成手術(サイナスリフト)が必要」と説明を受けた患者様でした。骨造成の規模、治療期間、費用がいずれも大きな負担となり、治療に踏み切れずご来院されました。
「骨を大きく足す手術以外の方法で、インプラント治療を受けたい」。これがご相談の内容でした。

上顎右側の骨が、上下両方から失われていました。治療前のパノラマX線写真では、上顎右側の臼歯部が長期にわたって欠損しており、その真上にある上顎洞(写真の黄色の線で囲っている箇所)という空洞が大きく下方へ広がっている状態が確認できます。
これは長期の歯の欠損で起こる、いわば必然の変化です。
一般的なインプラントは長さ8〜10mmが必要とされます。この患者様の残存骨は、このままではインプラントの先端が上顎洞に突き抜けてしまう厚みしかありませんでした。他院で「骨がない」と説明されたのは、この状態を指しています。

さらに、欠損部の手前にあった歯(過去に根の治療を受けていた歯)も保存が困難な状態でした。
右側の奥歯で噛めないため、噛む力の負担が反対側に偏っていました。この状態が続くと、残っている歯にも過剰な負担がかかり、噛み合わせ全体の崩れにつながります。
上顎洞が下がってきて骨が足りない場合、標準的に行われるのはサイナスリフト(上顎洞底挙上術・側方アプローチ)です。
①頬側の歯茎を大きく開く
②上顎洞の外側の骨壁に窓を開ける
③上顎洞の内側を覆う粘膜(シュナイダー膜)をはがして持ち上げる
④できたスペースに骨補填材(または自分の骨を採取したもの)を詰める
⑤6〜9ヶ月かけて骨が固まるのを待つ
⑥改めてインプラント埋入手術を行い、インプラントを埋入する
⑦さらに骨とインプラントが結合するのを待つ
確立された信頼性の高い方法ですが、切開範囲が広く腫れや痛みが出やすい、手術が2回必要、治療完了までに1年前後かかることがある、費用が大きくなるといった負担があります。
CTで骨の厚み・上顎洞の形態・粘膜の状態を精密に計測したうえで、グラフトレスサイナスリフト(骨補填材を用いない上顎洞底挙上術)が可能と判断しました。
「グラフトレス(graft-less)」とは、骨の移植材料を使わないという意味です。骨造成をしないわけではありません。
骨が回復していく仕組みは下記です。
これは、歯を抜いた穴が血のかたまりで満たされ、数ヶ月かけて骨で埋まっていくのと同じ仕組みです。体がもともと持っている治し方を、上顎洞の中で意図的に起こしているとお考えいただくとわかりやすいと思います。
つまり、「骨を足す」のではなく、「骨が自分で育つ場所をつくる」という考え方です。人工材料を入れないため、材料由来のリスクがなく、自分の骨を採取する必要もありません。
この仕組みのため、粘膜を持ち上げてスペースをつくる処置と、インプラントを埋入する処置は、同じ手術のなかで一度に行います。持ち上げた上顎洞粘膜を支えているのはインプラントそのものなので、「骨が再生するのを待ってから埋入する」という順序が成り立たないのです。従来法では詰めた骨補填材がスペースを支えてくれるためインプラントを後回しにできますが、その代わりに骨補填材が成熟するまでの待機期間と、2回目の手術が必要になります。この術式は、骨補填材を用いなくても良好な新生骨の形成とインプラントの安定が得られることが、複数の臨床研究で報告されています。
どの患者様にも使える方法ではありません。当院では次の点をCTで確認したうえで適応を判断しています。
条件を満たさない場合は、骨補填材を用いる治療法などをご提案します。他院で診断された治療法以外にも、選択肢がある可能性があります。まずは、お気軽にセカンドオピニオンをご検討ください。
上顎右側に対して、以下を同時に実施しています。
この組み合わせは技術的に難度が高い処置です。抜歯直後の骨は不安定で、しかも既存骨が少ない状況で、インプラントの初期固定を確実に得る必要があります。初期固定が得られなければ、インプラントが粘膜を支える支柱の役目を果たせず、骨補填材を使わない前提そのものが成立しません。
事前のCT診断で、この初期固定が確保できると読み切れたことが、低侵襲な術式を選択できた理由です。
インプラントと骨の結合、そして上顎洞内で持ち上げたスペースの骨の再生が、同時に進行します。
ここでのポイントは、待ち時間が1回にまとまっているということです。従来法では「骨補填材が成熟するのを待つ期間」と「インプラントが骨と結合するのを待つ期間」が別々に発生しますが、同時埋入ではこれが1回で済みます。ここが治療期間の短縮につながっています。
2本のインプラントを連結したインプラントブリッジとして、奥歯3歯分の噛み合わせを回復しました。
同時期に、下顎右側の大臼歯部にもインプラント治療を行っています。


治療前後の口腔内写真をご覧いただくと、右側の奥歯が広範囲に失われていた状態から、奥歯までしっかり連続した歯列が回復していることがわかります。
治療期間は4ヶ月でした。従来のサイナスリフトを併用するインプラント治療では、骨補填材が成熟するのを待つ必要と2回目の埋入手術が必要なため、同じ状態から治療完了まで1年程度かかることも珍しくありません。
今回はこの2つの工程をグラフトレスサイナスリフトに置き換えたことで、大幅に短縮できています。
右側の奥歯で噛めるようになったことで、反対側に偏っていた噛む力の負担も分散され、残存歯の保護にもつながっています。
| 主訴 | 他院で骨がないのでインプラントをするには大掛かりな骨造成が必要と言われたが、その他の方法がないか相談したい |
|---|---|
| 治療期間 | 4ヶ月 |
| 治療費 | 1,650,000円(税込) インプラント(臼歯)3本分 55,000円(税込) グラフトレスサイナスリフト 55,000円(税込) 抜歯即時埋入加算 |
| リスク | 術後の口腔管理が不適切な場合、埋入したインプラント周囲に感染・炎症を起こし、脱落する可能性があります。 |
〒166-0004
東京都杉並区阿佐谷南3丁目35−8
パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス 1F
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