case11抜歯後の上顎奥歯をフラップレス手術でインプラント治療し、
周囲の歯も含めて審美的に回復した症例

治療前後の写真

治療前
治療前

上顎奥歯が破折・欠損しており、後方には年数の経った金属の被せ物が見られる状態です。

治療後
治療後

インプラントによる被せ物と周囲のセラミック修復により、天然歯と調和した色調・形態が回復しています。

初診時の状態と診査・診断

上顎の奥歯が破折しており、抜歯とインプラントによる回復をご希望で来院されました。当院にて破折した歯を抜歯し、治癒を待った上で、欠損部をインプラントで治療する計画を立てました。

欠損部の後方には年数の経った金属の被せ物が入っていたため、欠損部だけでなく、咬合平面(噛み合わせの高さのライン)を含めて口腔全体を治療する必要があると判断しました。

本症例では、CTで評価した結果、骨の高さも幅も十分に保たれており、骨造成を行わずに計画どおりのインプラントを埋入できる状態でした。周囲組織も完全に治癒していたので、患者様への侵襲の少ない切開しないインプラント治療を行いました。

治療方針

インプラント治療を選択

歯の欠損にはいくつか治療法がありますが、入れ歯やブリッジは、失った歯を補うために隣の歯にも負担をかける治療法です。ブリッジは両隣の歯を支台歯として削り、本来1本分の歯が受け止めるはずの咬合力まで肩代わりさせます。入れ歯も、バネをかけた歯に力がかかります。

特に、噛む力の強い奥歯では、支台歯の破折や二次う蝕のリスクが年々積み上がります。インプラントは人工歯根が1本で咬合力を受け止めるため、隣の歯に負担をかけず、残っている歯を守ることができます。患者様のご希望もあり、今回はインプラントを選択しました。

なぜフラップレス手術を選択したのか

通常の埋入手術では、歯茎を切開して骨から剥離し(フラップを開く)、骨面を直視しながら進めます。確実性の高い術式ですが、骨膜を剥がすと骨表面への血流が一時的に途絶えるため、術後の腫れや痛み、わずかな辺縁骨の吸収が避けられません。

一方、フラップレス手術は切開・剥離をせず、歯茎の上から必要最小限の開口部を作って埋入する術式です。骨膜が骨に付いたまま保たれるので血流が維持され、辺縁骨の吸収を最小限に抑えられます。腫れや痛みが少なく治癒も早く、インプラント周囲の健康に不可欠な角化歯肉(硬くて丈夫な歯茎)を温存できることも利点です。

ただし、骨面を直視しないまま進める術式です。骨の幅と形、上顎洞底までの距離、角化歯肉の量、骨質を術前にCTで確認しておく必要があり、骨造成が必要な症例や骨幅の乏しい症例は適応外です。低侵襲を目的にするのではなく、適応を見極めた結果として低侵襲になる、という優先順位は変えないようにしています。

実際に行った治療

インプラント埋入手術

術前の歯槽堤は平坦で、角化歯肉に覆われた良好な状態でした。切開は加えず、歯肉に4mm程度の穴を空け、その穴から埋入窩を形成し、計画どおりの位置に埋入していきます。開口部はインプラントの直径分にとどまり、出血もごく少量でした。

軟らかい上顎の骨でも十分な初期固定が得られたため、埋入と同時にヒーリングアバットメント(治癒用の部品)を装着する一回法を選択し、歯茎を再び開く二次手術を省いています。

フラップレス手術の様子

フラップレス手術前の口腔内
フラップレス手術中の口腔内
フラップレス手術直後の口腔内

治癒期間と上部構造の製作

上顎は骨が軟らかく結合に時間を要するため、下顎より長めに治癒期間をとり、ISQ測定器を用いて、インプラントと骨の結合(オッセオインテグレーション)を数値的に確認してから被せ物の製作に入りました。

インプラントには歯根膜のクッションがなく、噛んだ力がそのまま骨に伝わります。そのためセラミックの上部構造は天然歯よりごくわずかに低く仕上げ、顎を横に動かしたときに側方力がかからない形態に調整しています。

周囲の歯の審美的歯冠修復

上部構造と併せて、周囲の金属の被せ物もセラミックに置き換えました。年数の経った被せ物は適合の隙間から二次う蝕が進んでいることが多く、また高さや傾きの崩れた被せ物を残したままインプラントだけを新しくすると、乱れた咬合平面のなかで不利な力がかかり続けます。

当院では欠損部のみならず、お口全体のバランスを重視した包括的な治療を行っております。治療後は天然歯と調和した色調・形態が回復し、上下の臼歯部でしっかりと咬み合う関係が得られています。

治療後のメインテナンス

インプラントには歯根膜がなく、天然歯より細菌への防御機構が弱いという弱点があります。清掃が不十分な状態が続くと、歯茎の炎症から、周囲の骨が失われるインプラント周囲炎へ進みます。ご自宅での清掃に加え、数ヶ月ごとの定期検診で歯茎の状態、X線での骨の高さ、上部構造のゆるみを確認していきます。

治療の概要

主訴抜歯した奥歯をインプラントにしたい
治療期間6ヶ月
治療費550,000円(税込) インプラント(奥歯)1本分
リスク術後の口腔管理が不適切な場合、埋入したインプラント周囲に感染・炎症を起こし、脱落する可能性があります。

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